JavaScript系のアプリ開発を行っているデベロッパーがパフォーマンスに限界を感じるなどしてFlutterへの移行を検討することもあるだろう。
前回はWidgetツリーについて述べたが、FlutterにおけるWidgetツリーとReactのVirtual DOMの間には概念的な類似性があるので、本稿ではそれについて述べたい。
React/React Native/JavaScript/TypeScript開発者がFlutterに移行を考慮する際、FlutterのWidget treeとReactのVirtual DOMとの関係を理解することが重要である。これらの概念は、それぞれのフレームワークの運用において中心的な役割を果たすが、それぞれのエコシステムに合わせて特有の特徴がある。
- 概念的な類似点:
- 木構造:FlutterのWidget treeもReactのVirtual DOMも、UIコンポーネントを表す際に階層的な木構造を使用する。
- リアクティブな更新:これらはリアクティブな更新を可能にし、状態の変更に応じてUIが自動的に更新される。
- 宣言的アプローチ:どちらも宣言的なプログラミングモデルを採用し、開発者が各状態に対してUIがどのように見えるべきかを記述できるようにする。
- FlutterのWidget Tree:
- すべてがWidget:Flutterでは、単純なテキストラベルから複雑なレイアウトやインタラクティブな要素まで、すべてをWidgetで扱う。
- ネイティブコードへのコンパイル:Flutterはブリッジなしで直接ネイティブコードにコンパイルするため、潜在的に高いパフォーマンスを実現する。
- 状態管理:状態が変更されるとWidget treeが再構築されるが、Flutterはこのプロセスを非常に効率的に最適化する。
- ReactのVirtual DOM:
- JavaScriptライブラリ:ReactはUIを構築するためにコンポーネントを使用するJavaScriptライブラリである。
- Virtual DOMとは軽量なコピー:Reactは、レンダリングパフォーマンスを最適化するために、実際のDOMの軽量なコピーであるVirtual DOMを維持する。
- Diffingアルゴリズム:状態やpropsが変更されると、ReactはDiffingアルゴリズムを使用してVirtual DOMを更新し、必要最小限の操作で実際のDOMを更新する。
- React開発者への比較:
- 言語:ReactではJavaScriptまたはTypeScriptが使用されるが、FlutterではDartを使用する。Dartは多くのJavaScript開発者にはなじみが薄いが、構文は大きく異ならない。
- コンポーネント対Widget:ReactのコンポーネントはFlutterのWidgetと機能的には似ているが、Widgetはレイアウトやスタイリングを含む幅広い要素をカバーする。
- パフォーマンス:Flutterは直接ネイティブコードにコンパイルし、独自のレンダリングエンジンを使用するため、特に複雑なアニメーションや遷移ではより優れたパフォーマンスを提供する可能性がある。
- 移行時の考慮事項:
- 学習曲線:React開発者はFlutterのWidgetコンセプトに馴染みを感じるかもしれないが、DartやFlutterの異なるライフサイクルメソッドに適応する必要がある。
- エコシステムとコミュニティ:Reactには広大なエコシステムとコミュニティがあるが、Flutterも成長中だがまだ同じレベルのコミュニティ主導のリソースはないかもしれない。
- クロスプラットフォームの能力:どちらも強力なクロスプラットフォーム機能を提供するが、Flutterはモバイルだけでなく、ウェブやデスクトップにも及び、プラットフォーム間でより一貫した体験を提供する。
結論:
ReactのVirtual DOMとFlutterのWidget treeはいくつかの概念的な類似点を共有しているが、内部的には異なる動作をしている。Widget中心のデザインと直接ネイティブへのコンパイルによるFlutterのアプローチは、パフォーマンスと一貫したクロスプラットフォーム体験において明確な利点を提供する。Flutterへの移行を考慮するReact開発者は、いくつかの馴染みのある土台を見つけるが、Dartの学習とFlutter固有のアーキテクチャパターンへの適応を準備する必要がある。
以前述べたようにFlutterはSingle Threaded Modelで動作していることもNode.jsで動作するReactと似ている。今回紹介した類似点と相まってFlutterはJavaScript系の開発者が取り組みやすいフレームワークであると言える。