統計学とAI/MLにおける「モデル」の違いと共通点:AIを業務に組み込むために必要な理解

投稿者: | 2024年7月6日

統計学と機械学習における「モデル」という言葉について

データサイエンスや機械学習が大学卒業後に入ってきた世代の人間にとって、どちらでも使われているモデルという言葉に戸惑うことは少なくない。あるデータを元に数式を組み立てることをモデリングというのはこう言ったジャンルが登場する前から馴染みがある。では現代の「モデル」とは伝統的/Bayesian統計学と機械学習/AIのの世界で、どのようなものを指しているのか少しまとめてみた。そしてその認識に立ってAIを業務のワークフローに組み込むために必要な理解(イメージ)を記載した。

伝統的/Bayesian統計学と機械学習/AIの両方で、「モデル」という用語はデータを記述または予測するための数学的な表現を指す。しかし、各分野でモデルが構築され使用される方法や哲学には大きな違いがある。

伝統的/Bayesian統計学

  1. 伝統的統計学:
  • モデル: 伝統的統計学では、モデルは変数間の関係を記述する数学的な方程式のセットである。一般的なモデルには線形回帰、ロジスティック回帰、時系列モデルなどが含まれる。
  • 目的: 主な目的は、関係を推定し、データ生成過程の理解を深めることである。モデルは、仮説検定、パラメータ推定、およびサンプルデータに基づいた母集団についての推論に使用される。
  • 仮定: 伝統的な統計モデルは、データに関する強い仮定(正規性、独立性、同分散性など)に依存している。
  1. Bayesian統計学:
  • モデル: Bayesianモデルは、モデリングプロセスに事前知識や信念を組み込む。これらの信念はデータによって更新され、事後分布を生成する。
  • 目的: 主な焦点は、データが増えるにつれて仮説の確率を更新することである。Bayesian方法は推論のための確率的なフレームワークを提供する。
  • 仮定: Bayesianモデルは、データを観測する前のパラメータに関する初期の信念を反映する事前分布を明示的に組み込む。

機械学習/AI

  1. 機械学習:
  • モデル: 機械学習におけるモデルは、データからパターンを学習するアルゴリズムまたはアルゴリズムのセットである。一般的なモデルにはニューラルネットワーク、決定木、サポートベクターマシン、アンサンブル法などが含まれる。
  • 目的: 主な目的は、学習したパターンに基づいて予測またはデータを分類することである。焦点は精度、適合率、再現率、または平均二乗誤差などのパフォーマンス指標の最適化にある。
  • 仮定: 機械学習モデルは、伝統的な統計モデルと比較してデータ分布に関する仮定が少ないことが多い。その代わり、大量のデータを使用して基礎となるパターンを学習する。
  1. AI (人工知能):
  • モデル: AIは機械学習モデルを包含し、強化学習、自然言語処理モデル、生成モデルなどのより複雑なシステムにまで拡張される。
  • 目的: 人間のような理解と意思決定を必要とするタスクを遂行するインテリジェントシステムの作成を目指す。
  • 仮定: 特にディープラーニングモデルなどのAIモデルは、画像、テキスト、音声などの複雑で非構造化データを最小限の仮定で処理することができる。

統計モデルと機械学習モデルの関係

  1. 重複と違い:
  • 重複: 両分野ともデータを表現し、予測するためにモデルを使用する。線形回帰、ロジスティック回帰、Bayesian推論などの技術は両方で共通している。
  • 違い: 伝統的/Bayesian統計学は推論、パラメータ推定、仮説検定に重点を置き、機械学習は予測、パターン認識、パフォーマンスの最適化に重点を置く。
  1. 金融価格予測への応用:
  • 伝統的/Bayesian統計学: これらの方法は価格分布のモデリング、ボラティリティの推定、金融指標間の関係の理解に使用されることがある。Bayesian方法は市場の事前知識を組み込み、新しいデータが入るたびに予測を更新することができる。
  • 機械学習/AI: これらの技術は時系列予測、異常検出、または取引アルゴリズムの開発に使用される。機械学習モデルは、伝統的なモデルでは見逃される可能性のあるデータの複雑なパターンや相互作用を捉えることができる。

両アプローチの統合

実際には、伝統的/Bayesian統計と機械学習を組み合わせることが有益である。たとえば、Bayesian方法は事前知識を用いて機械学習モデルに情報を提供することができるし、伝統的な統計モデルは機械学習アルゴリズムの性能を評価するためのベンチマークとして機能することができる。金融価格予測において、このハイブリッドアプローチは、両分野の強みを活かしてより堅牢で正確なモデルを構築することができる。

両者を組み合わせることで一つの目的を達成するアプリケーションを形成することができるのである。

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